30年近く会社員として働いてきた私にとって、ビジネス書や自己啓発書を読むことは数少ない自分磨きの手段でした。
休日や帰宅後の時間を使い、自分磨きを続けるためにでも広く浅くですが長期的に実践する形で読んできた自負はあります。
しかし、振り返ってみると、それらの本に書かれていた内容を実際の職場で活かせた場面は、それほど多くありませんでした。いや、むしろほとんどなかったと言ったほうが正直かもしれません。
自己啓発書がサラリーマンに刺さりづらい理由
自己啓発本には、理想的な人間関係や圧倒的な行動力、強いメンタルを前提にしたアドバイスがよく登場します。しかし現実の職場ではそう簡単にはいきません。
たとえば、「嫌な上司とは距離をとる」「自分の意見をハッキリ言え」またはその逆バージョンがあったりと、アドバイスをそのまま実行できる会社員がどれだけいるでしょうか?
現実は、上司の顔色をうかがい、空気を読みながら発言のタイミングをはかる。そんな日々の中で、「理想的な振る舞い」は逆にストレスの原因になることもあります。
また、チームワークや忖度が重視される日本の職場文化において、「自己主張」や「成果主義」といった考え方は浮いてしまうリスクもあるのです。
実践したくても、時間も気力も足りない。結局は「いいことが書いてあったなぁ」で終わってしまうのが現実でした。
そう、本に投資するという意味では的確に行動できたのですが、何か身になったことがあったかと言えばノーです。
自己啓発書の対象は「自由に働ける人たち」?
書店に並ぶベストセラーの多くは、起業家やインフルエンサーが著者であり、彼らの経験や成功談をベースにしたものがほとんどです。
彼らが語る「夢」は確かに魅力的ですが、それは組織に縛られない働き方をしているからこそ叶えられるもの。会社員として日々を過ごす私たちには、あまりに遠い世界に思えるのです。
「朝のルーティンで人生が変わる」といった内容を読んでも、朝7時には満員電車に乗らなくてはならない現実が心のどこかで冷ややかに反応します。
だからこそ、私たちが本当に欲しいのは「人並みの幸せ」を叶えるための現実的なヒント。でも、そうしたテーマは本になりにくく売れにくいのが実情ではないでしょうか。
「プチ成功」や「ほどほどの幸せ」は、タイトルにしてもインパクトが弱く、出版社も手を出しにくい分野なのでしょう。
過去に読んだ本から学んだことは?
私自身、スティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣』、ナポレオン・ヒルの「思考は現実化する」さらには最近流行った「DIE WITH ZERO」なども読みました。
どれも内容は素晴らしく納得できる考え方ばかり。しかし、「実践できるか」となると、そこに高い壁が立ちはだかります。
たとえば「信頼残高を増やそう」という習慣を取り入れたくても、相手がそもそも関係性を築こうとしていない場合、うまくいかない。努力が一方通行になるだけで、むしろ虚しさが残った経験もあります。
また、「朝5時に起きて一日をデザインする」なども、当時は残業続きで帰宅が遅く、早起きどころか疲労回復が優先という状態でした。
つまり、会社員としての日常が、本の中にある「理想的な行動パターン」と噛み合わなかったのです。
読書の効果が出るには「時間と環境」が必要
本から学んだことを実生活に落とし込むには、何よりも「時間」と「自由」が不可欠です。
サラリーマンには時間も自由も乏しい。朝は時間との戦い、昼は気疲れ夜はクタクタ。自分を変えるためのエネルギーは自分が主体性を持たない日々の業務で使い果たされてしまいます。
読書で得た知識を「考え」「行動に移し」「検証する」というサイクルを回す余裕がどうしても生まれませんでした。
加えて、職場の評価制度や人間関係が、実践の妨げになることもあります。
また、自分が身に本から得て深めてきた知恵や知識と、職場の仲間のレベルがある程度釣り合っていることも要求されるでしょう。
「言っていることは正しい、でも社内では浮く」というジレンマ。これは長く働いている人ほど痛感しているかもしれません。
脱サラ後に変わった読書の意味
私が脱サラを決意した理由は、決して大きな夢や野望ではありませんでした。
「もう少し自由に働きたい」
「自分のペースで生活したい」
「読書の成果を活かしてみたい」
その中のひとつに、読書の知恵を「実践できる環境」が欲しかった、という気持ちもほんの少し混ざっていました。
いざ会社を辞めてみると、それまで蓄えていた読書の知識が驚くほどスムーズに行動に繋がるようになったのです。
「時間がある」「裁量がある」「誰かに気を遣わず試せる。これだけで読書は「知識の貯蓄」から「行動の起爆剤」へと変わりました。
読書×自由な働き方の相乗効果
今では、読んだ本の内容を実際に取り入れ、自分の生活や仕事に反映させるという試行錯誤を繰り返しています。
全てがうまくいくわけではありませんが、「やってみる→うまくいかない→やり方を変える」というプロセスが自分の成長につながっている実感があります。
かつては「こうなれたらいいな」と思っていただけだったことが、今は「どうやったらできるか」と行動に転換できるようになったのです。
読書は“いつかの自分”のための投資
サラリーマン時代、自己啓発本を読んでいたことが無駄だったとは思っていません。
実践できなかったとしても、それらの本は「理想の自分」や「新しい視点」を持つきっかけを与えてくれました。また、自分にとって読みやすい本の類型や分厚い本の読み進め方といったテクニックは充分磨かれたようです。
そして、時が経ち働き方を変えた今になって、その「種」が少しずつ芽吹いているように感じています。読書はすぐに効果が出るものではありませんが時間と環境が整ったとき必ず意味を持ちはじめます。
これからも、過去の読書とこれからの読書をリンクさせ自分自身の糧にしていきたいと思います。
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